ぱっと見たら明るいしきれいだし、
なんだか看板絵みたいでとっつきやすいのですが、
その実、結構コワイ絵を描く人です。
昔、若桑みどりさんが指摘していましたが、
マグリットはものすごく空虚な絵を描く人です。
絵描きにしては珍しく、
マグリットはごく普通の人生を歩んだ人です。
奥さんと一緒に、静かに地味に、一市民として暮らしました。
しかし、それは
ぎりぎり精一杯頑張って保っているような
「普通の生活」でもあったようです。
マグリットが13歳の時、母親の自殺という事件がありました。
今まで普通だった生活が、突如母の死で崩れ去る、
そんな緊張感をマグリットは持っていました。
でも、それは特殊なことではなく、
私たちにも常に起こりうる話です。
たった今、この瞬間、ここは普通であるけれど、
次の瞬間にはどうなるか分からない。
明るく楽しく方便を使って生きているけれど、
そんなのはいつ壊れたっておかしくない。
そう考えると、
マグリットって本当にシュルレアリスト(超現実主義)です。
シュルレアル(超現実)は決して悪夢のような別世界ではなく、
今・ここに見える世界のふとした驚き、みたいなものですから。
最近つくづく、普通の生活って大変だなあと思う。
やけになったり、諦めたり、
馬鹿みたいに振る舞うのは簡単だものね。
毎日会社に行って、
ご飯作って、
ときどき掃除洗濯をして、
早寝早起き、できればジョギングのひとつもして、
たまには友だちと会い、
上司の食事に付き合い、
月曜日の朝はいつも憂鬱で眠たい、
……そんな普通の生活。
でも、がんばって頑張って、そんな普通の生活を保たなければ。

【元ネタ:ルネ・マグリット「現実感覚」1963油彩、カンバス】
てきとうに鉛筆で描いてみた。
黄昏時に中空にポッカリと浮かぶ月と岩。
なんだか懐かしい気になるのが不思議。


